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 香港を含む多くの国では、ほとんどの外国人の子どもが現地の文化に完全になじむことはありません。決定的に、彼らは常にアウトサイダーなのです。

これが「サードカルチャーキッズ」の核心です。もはや自分たちのホームカルチャーで生活せず、ホストカルチャーとも融合することはありません。かれらはその名の通り、第三(サード)の場所に暮らすのです。

 日本の山形県に生まれたハルカ・ヌガさんは、生後数ヶ月で香港に移住しました。「香港では私は日本人と思われているけれど、日本では、海外子女、つまり外国で育ち、教育を受けた日本人と呼ばれます。子どもの頃は、自分のアイデンティティーに対して複雑な気持ちを抱いていました。どの文化にも属していないように感じていたのです」

 もうひとつの大きな短所は、移動が多い、国外に住む人たちのコミュニティーにはよくありがちですが、その不安定さと友人関係を維持する難しさが挙げられます。

 私の子どもが、「家族が引っ越ししたり、オーストラリアに帰ることになったら、友達にはそのことを言わないでね。すぐに友達が離れていってしまうから」と言われたことがあります。長く続かないとわかっている人間関係に時間やエネルギーを使うのは意味がないという考えなのです。

 シンガポールから他の都市に引っ越しすることを知った時、一人のティーンエージャーの少年は、

「新しいところに引っ越ししたいかわからない。心配なのは勉強や治安、友達のこと。僕は今2年間で卒業できる高校の1年生だから、今引っ越しするのはとても都合が悪いし、不安だ。新しい土地ではシステムの違う別のインターナショナルスクールに通うことになる。今住んでいるところよりも安全でないことも心配だ。全く違う環境になるのだから、もちろん、怖い。友達が恋しくなるだろうな。ここではたくさんの素晴らしい人たちと出会ったのに、もうすぐ引っ越ししなければいけないなんて本当に悲しい。またみんなに会いに帰ってきたい。」と言いました。

 アイデンティティーを失うかもしれないこと、世界のどこかに所属しているという感覚、そして友人関係を維持する難しさを、違う文化の中で暮らし、学ぶことと天秤にかけなければいけません。

 そして、最終的に国外に住む子どもである値打ちがあるかどうかは、個人的な経験とそれに対するそれぞれの価値付けによるのです。

 私が子ども時代ずっとサードカルチャーキッズであった人たちにインタビューをした時、ジョディーという一人の女性から興味深い答えが帰ってきました。「ホームカルチャー」と「ホストカルチャー」という言葉が、この10年ほどの間にその意味を失ったため、「サードカルチャーキッズ」という言葉の意味失われたと言いました。

 彼女はそれがグローバリゼーションとテクノロジーに関係していると言い、国外に暮らし、移動する子どもたちはもはや富裕層とその子どもたちだけではなく、学生や難民など、「普通の」人たちもするようになったからだと言います。彼らとその子どもたちの多くにとって、「サードカルチャー」は「ホームカルチャー」と同義になっているのです。

 

【デビッド・ヌーナン教授】Dr. David Nunan

TESOL (Teaching English to Speakers of Other Languages; 英語教授法)の世界的権威であり、アナハイム大学のデビッド・ヌーナンTESOLインスティチュートのオンラインTESOL認定およびTEYL(Teaching English to Young Learners)認定プログラムを開発・監修を務める。多くの著書が世界中で教科書として使用され、「Go For It!」シリーズは全世界で累計2.5億部の売上部数を記録。2000年にはTESOL協会(言語教育分野の世界最大の学会)の会長を務めた。本学ではTESOL修士課程にて教えるほか、これまで香港大学やコロンビア大学(アメリカ)、上智大学、チュラロンコン大学(タイ)、マッコーリー大学(オーストラリア)などの一中大学での指導経験を持ち、徹底した学習者中心の教育を掲げ、1996年のアナハイム大学設立時より、本学とともにオンライン教育を牽引している。

 

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